医療・クリニック
クリニックのAI電話とは?費用・連携・高齢者対応まで導入前に確認する10項目
監修・執筆スリーシックス株式会社
この記事の要点
クリニックのAI電話は、電話の一次受けと診療時間外の対応に適した仕組みです。診察の判断や緊急の電話は人に回す設計が前提で、費用・連携・選び方も小規模院の目線で整理します。
クリニックのAI電話は、電話の「一次受け」と診療時間外の対応に向いた仕組みです。診察内容の判断や緊急の電話は、人に回す設計が前提になります。この記事では、費用・電子カルテとの連携・高齢者への対応・選び方・導入の手順を、スタッフが少ない小規模クリニックの目線で順に整理します。
なお料金や機能は変わりやすい情報です。契約前に、各サービスの公式ページで最新の内容を確認しましょう。
クリニックのAI電話とは?電話の「一次受け」を任せる仕組み
AI電話とは、AIが患者さんの声を聞き取り、用件に合わせて受付や案内を行う電話サービスです。聞き取った内容は文字にして残し、必要な電話だけを人に回します。
IVR・ボイスボット・電話代行との違い
IVRとは、「予約は1番を押してください」のように、番号の操作で振り分ける音声案内です。ボイスボットとは、音声で自動的に応答するしくみの総称です。製品によって呼び方が違い、境目はあいまいです。違いは次の表のとおりです。
| 種類 | 仕組み | 得意なこと | 弱いところ |
|---|---|---|---|
| IVR | 番号を押して選ぶ | 用件が決まっている電話の振り分け | 選択肢にない用件に弱い |
| ボイスボット | 決めた流れで音声が応答する | 定型の案内や受付 | 流れから外れる話に弱い |
| AI電話 | 話し言葉の用件を聞き取り文字にする | 用件の聞き取りと一次受け | 診察の判断はできない |
| 電話代行 | 人が代わりに電話を受ける | 複雑な話への対応 | 人件費の分だけ費用がかさむ |
向く用件と向かない用件
AI電話対応に適しているのは、答えが決まっている内容です。向かないのは、人の判断や気づかいが必要な内容です。
- 向く用件:「予約の受付」「診療時間や場所の案内」「休診日の問い合わせ」
- 人が出る用件:「症状の相談」「緊急の電話」「クレーム」「複雑な事情のある相談」
つまり、AIは受付の代わりではなく、受付の前に立つ「窓口の係」です。ここを間違えると、現場で使われなくなります。
導入メリット
主なメリットは、次の4つです。
- 診療時間外や休診日の電話を取りこぼしにくくなります。
- 受付スタッフが、来院した患者さんの対応に集中しやすくなります。
- 通話が自動で録音され、文字になります。メールやチャットでスタッフに共有する仕組みもあります。
- 通話のあとにSMSで、Web予約フォームや問診フォームのURLを送る仕組みもあります。
効果の数字は、条件つきで見てください。NOMOCa-AI callを導入した歯科医院の事例では、電話対応が約47%減り、年間100万円以上のコスト削減になったとされます。ただし事業者側の事例です。診療科や患者層が違えば、結果も変わります。
自院の数字で効果を試算する
費用に見合うかは、次の式で見当をつけます。
- 月の着信数 × 1件あたりの対応時間(分)÷ 60 = 月の対応時間
- 月の対応時間 × 自院の受付の時給 = 電話にかかる月の人件費
たとえば月300件で1件4分なら、1,200分で約20時間です。受付が1本の電話にかける時間は、平均3〜5分とされます。
ただし、電話がすべてAIに回るわけではありません。人が出る電話は残ります。計算結果は「最大でこのくらい」と考え、月額費用と比べましょう。
クリニックのAI電話の費用の目安と料金体系
費用は「初期費用」「月額基本料」「従量課金」の3つで構成されるのが一般的です。初期費用は0円〜26万円、月額基本料は0円〜15万円と幅があります。
価格帯は3つに分かれる
| 価格帯 | 初期費用・月額の目安 | 従量課金 | 向くクリニック |
|---|---|---|---|
| 月3,000円台〜 | 初期費用0円のサービスもある | なしの例もある | 小規模で、まず試したい院 |
| 月1万円前後 | プランにより異なる | 超過分にかかることがある | 着信が一定数ある院 |
| 月数万円〜 | プランにより異なる | 契約による | 予約システムとの連携まで求める院 |
低価格帯の例がIVRyです。初期費用は0円で、月額は3,317円〜です(年払い、電話番号の維持費は別)。AI対応に従量課金はなく、全通話の録音が標準です。30着電まで無料のトライアルもあります。
予約まで任せるAI電話は、月額3万〜5万円程度という説があります。幅が大きいため、見積もりの条件をそろえて比べましょう。
着信が増えたときの追加費用
見落としやすいのが、追加費用です。次の3点を契約前に聞いてください。
- 通話の件数や通話時間が増えたとき、いくら加算されるか
- 電子カルテや予約システムとの連携が、別料金になっていないか
- 電話番号の維持費や転送料が、月額に含まれているか
定額と従量の選び方
目安として、定額型は月200件以上の院に向き、従量課金型は月200件以下の院に向くとされます。まず1〜2週間の着信数を数え、月の件数に直してから選びましょう。
電子カルテ・予約システムとの連携:3つのパターンと確認方法
連携は「自動連携」「CSV取り込み」「連携しない」の3つに分けて考えます。小規模クリニックなら、連携しない運用から始めるのが現実的です。
| パターン | 内容 | 良い点 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動連携 | 予約内容がシステムに自動で入る | 入力の手間が少ない | 費用と工期がかかりやすい。対応製品が限られる |
| CSV取り込み | 通話内容をファイルで出し、職員が取り込む | 連携の費用を抑えやすい | 職員の手作業が残る |
| 連携しない | 電話の入口だけAIが受け、予約は人が入力する | 電子カルテに触れず始めやすい | 二重入力が発生する |
連携しない独立型のサービスもあります。通話内容をCSVで出力できる設計のものです。
判断の流れ
- 1日の予約の電話が少ない院は、「連携しない」から始めます。
- 手入力が負担になってきたら、「CSV取り込み」を試します。
- 件数が多く、手作業が限界なら、「自動連携」の見積もりを取ります。
自院の製品名で確認する3ステップ
連携できるかは、自院の製品名で個別に確認するものです。「電子カルテ連携対応」の表記だけでは判断できません。
- 電子カルテ・予約システム・レセコンの製品名とバージョンを書き出します。
- AI電話の事業者に製品名を伝え、「自動連携」「CSV」「非対応」のどれか確認します。
- 電子カルテの会社にも、連携の可否と追加費用・工期を確認します。
追加費用と工期は、製品の組み合わせで変わります。個別の見積もりで確かめましょう。
高齢者・方言・聞き間違い・緊急時への備え
高齢の患者さんや聞き間違いへの備えは、AIの性能より「人に転送する設計」で決まります。導入前にルールを決めておきましょう。
運用ルールのひな形
- AIが2回続けて聞き取れなかったら、受付に転送します。
- 「発熱」「胸痛」「息苦しい」などの言葉が出たら、すぐ転送します。
- 一定時間、反応がないときも、受付に転送します。
- 予約を受けたら、通話後にSMSで内容を送り、確認してもらいます。
- 録音と文字起こしは、翌朝に受付が確認します。
高齢者が多く人の対応を望まれる院では、予約希望の電話を受付に回す設定ができます。一定時間操作がないときに、受付へつなぐ設定もあります。
想定場面と設定例
| 場面 | 設定例 |
|---|---|
| 高齢者が途中で切る | 折り返し用に番号を記録し、翌営業日に受付が確認する |
| 方言で聞き取れない | 2回目で受付に転送する。時間外は録音して翌朝に折り返す |
| 緊急症状の電話 | 症状の言葉で即時転送する。時間外は「緊急の場合は119番」と案内する |
| 同姓同名の患者さん | 生年月日を聞き、受付が最終確認する |
| 予約の重複 | 予約確定は人が行い、AIは「希望の受付」までにする |
| 迷惑電話 | 着信拒否の番号を登録し、録音を残す |
AIは診断をしません。緊急かどうかの判断をAIに任せない設計が大切です。
高齢の患者さんへの案内
連携しない独立型のサービスで、60代以上のモニターの9割が、体験後に抵抗を感じないと回答した例があります。事業者のデータですが、不安を和らげる参考にはなります。
案内文は短くします。たとえば次のとおりです。
「当院はAIが電話を受け付けます。人と話したい方は、いつでも『0』を押してください。」
失敗しない選び方チェックリストと主要サービスの比較
選ぶ基準は、「医療向けの実績」「設定のしやすさ」「契約条件」の3つです。ランキングではなく、自院の条件で絞りましょう。
選び方チェックリスト10項目
次の10項目は、そのまま事業者に聞く質問にもなります。
- 医療機関での導入実績はありますか。
- 自院の電子カルテ・予約システムの製品名で、連携の可否を確認できますか。
- 案内の流れ(シナリオ)を自由に変えられますか。設定の代行はありますか。
- 緊急キーワードで即時に転送できますか。
- 今の代表番号のまま使えますか。
- 転送料は、いくらかかりますか。
- 通話の録音と文字起こしは、標準ですか。通知はメールやLINEに対応しますか。
- 着信が増えたとき、追加費用はいくらですか。
- 個人情報の保存場所と、削除の方法は、どうなっていますか。
- 無料トライアルとサポート体制は、ありますか。
契約面の落とし穴
見落としやすいのは、次の3つです。
- 代表番号が使えず、番号を変える必要がある
- 転送料が二重にかかる
- 通話録音が、AIと人の通話で分かれてしまう
契約前に、番号の扱い・転送料・録音の保存方法の3つを書面で確認しましょう。
個人情報と通話録音
患者さんの声や症状は、重要な個人情報です。個人情報保護法と、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインに沿って、事業者の対応を確認しましょう。確認する点は「保存場所」「保存期間」「委託先の管理」「削除の方法」の4つです。
録音する場合は、通話の冒頭で「品質向上のため録音します」と案内します。ホームページにも、録音の目的を書いておきましょう。
主要サービスの比較(タイプ別)
| タイプ | サービス例 | 特徴 | 向くクリニック |
|---|---|---|---|
| 医療特化型 | NOMOCa-AI call | クリニックの電話に24時間365日、自動で応答する | 医療向けの設定や実績を重視する院 |
| 汎用の低価格型 | IVRy | 月額3,317円〜。全通話録音が標準 | 少ない費用で試したい小規模院 |
| 連携しない独立型 | Dr.JOY | 電子カルテと連携せず、通話内容をCSV出力できる | 電子カルテに触らず始めたい院 |
| 予約システム一体型 | 各社の予約システム | 予約の受付から管理まで一体で行う | 予約を一元管理したい中規模以上の院 |
機能や料金は変わります。必ず公式ページで最新の内容を確かめてください。
院の規模別の選び方
- 小規模(スタッフ2〜3名):低価格の汎用型か、連携しない独立型から始めます。
- 中規模:着信数が多ければ、定額型やCSV取り込みを検討します。
- 病院:複数の窓口があるため、自動連携と転送設計を事業者と詰めます。
導入の進め方:準備から運用までの流れ
導入は、準備・試験運用・周知・見直しの順に1つずつ進めます。製品を選ぶ前の準備が、結果を大きく左右します。
- 電話の記録と分類(1〜2週間):かかってきた電話の用件を、「予約」「変更」「案内」「症状の相談」などに分けて数えます。
- 任せる用件と人が出る用件を決める:先ほどの運用ルールに沿って、1枚の表にまとめます。
- ベンダーに質問する:チェックリスト10項目で、2〜3社を比べます。
- 試験運用:無料トライアルがあれば使います。まず時間外の電話だけで試すと、負担が少なくて済みます。
- 周知:ホームページ・院内掲示・自動音声の冒頭文を整えます。
- 導入後30日の見直し:次の項目を確認します。
導入後30日の見直し項目は、次のとおりです。
- 転送された電話の用件に、偏りはないか
- 聞き取れずに切れた電話は、何件あったか
- 折り返しが必要だった電話に、漏れはないか
- 患者さんから、不満の声は届いていないか
準備の進め方に迷う場合は、AI活用・業務効率化支援で相談できます。
患者さんへの周知
周知は3か所で行います。
- ホームページ:電話案内のページに、「AIが受け付けること」「人と話す方法」「録音の目的」を書きます。
- 院内掲示:受付やトイレに、短い案内文を貼ります。
- 自動音声の冒頭:「AIが受け付けます。人と話したい方は0を押してください。」と伝えます。
ホームページの案内は、質問と答えの形(FAQ)で書くと、AI検索にも引用されやすくなります。整え方は、クリニックのLLMO対策で説明しています。
よくある質問(FAQ)
クリニックのAI電話の費用はいくらですか?
初期費用は0円〜26万円、月額は0円〜15万円と幅があります。月3,000円台の小規模向けから、月数万円の予約連携型まで3つの価格帯があります。
AI電話とIVR(音声案内)の違いは何ですか?
IVRは番号を押して選ぶ方式です。AI電話は話し言葉の用件を聞き取り、文字にして残します。選択肢にない用件にも対応しやすい点が違いです。
電子カルテと連携できないと使えませんか?
使えます。電話の入口だけAIが受け、予約は人が入力する運用もあります。通話内容をCSVで出力するサービスもあります。
高齢の患者さんでも使えますか?
使えるように設計できます。聞き取れないときは受付に転送する設定ができます。人と話したい方向けの案内も、冒頭で伝えましょう。
AIが聞き間違えたときはどうなりますか?
2回続けて聞き取れなければ、受付に転送する設定が基本です。予約後にSMSで内容を送り、患者さんに確認してもらう方法もあります。
緊急の症状の電話はどう扱われますか?
「発熱」「胸痛」などの言葉が出たら、すぐ人に転送する設計にします。AIは診断をしません。時間外は「緊急の場合は119番」と案内します。
今の電話番号のまま導入できますか?
できる場合とできない場合があります。代表番号が使えない、転送料が二重にかかるといった落とし穴もあるため、契約前に確認しましょう。
導入までの期間はどれくらいですか?
連携の有無や製品で変わります。事前の電話の記録に1〜2週間かけ、その後の期間は事業者の見積もりで確認しましょう。
まとめ
要点は次の3つです。
- AI電話は、電話の一次受けと時間外対応に向きます。緊急や相談の電話は人に回す設計が前提です。
- 費用は月3,000円台から数万円まで幅があります。追加費用・転送料・番号の扱いを契約前に確認します。
- 連携は「自動連携」「CSV取り込み」「連携しない」の3つです。小規模院は連携しない運用から始めましょう。
まずは1〜2週間、電話の用件を数えるところから始めてください。ホームページの電話案内の見直しも含めて相談したい場合は、無料のAI Web診断をご利用ください。スリーシックス株式会社が、ホームページとAI活用の両面から確認します。
参考にした情報
よくある質問
クリニックのAI電話の費用はいくらですか?+
初期費用は0円〜26万円、月額は0円〜15万円と幅があります。月3,000円台の小規模向けから月数万円の予約連携型まで、大きく3つの価格帯があります。料金は変わりやすいため、公式ページで確認しましょう。
AI電話とIVR(音声案内)の違いは何ですか?+
IVRは番号を押して選ぶ方式です。AI電話は話し言葉の用件を聞き取り、文字にして残します。選択肢にない用件にも対応しやすい点が違いです。
電子カルテと連携できないと使えませんか?+
使えます。電話の入口だけAIが受け、予約は人が入力する運用もあります。通話内容をCSVで出力するサービスもあります。
AIが聞き間違えたときや緊急の電話はどうなりますか?+
2回続けて聞き取れなければ受付に転送する設定が基本です。「発熱」「胸痛」などの言葉が出たら、すぐ人に転送する設計にします。AIは診断をしません。
今の電話番号のまま導入できますか?+
できる場合とできない場合があります。代表番号が使えない、転送料が二重にかかる、録音が分かれるといった落とし穴があるため、契約前に確認しましょう。